研究概要 |
本研究の目的は、幼児期から青年期までの子どもが、大人の権威や権限をどのように概念化しているのか(権威概念の発達)、規範や権威に縛られない個人の決定権をどのように意識化し概念化するのか(個人概念の発達)について明らかにすることであった。研究成果は次の通りである。 (1)幼児の親も教師も一様に厳しくしたり甘くしたりしているのではない。場面の性質に応じて,幼児の反抗を受け入れたり(個人領域),拒否したりする(道徳領域,自己管理)。 (2)個人領域の概念は幼児期に既に存在し,個人領域と慣習領域で自己決定権意識を発揮する。慣習領域での自己決定権意識は大人のしつけと対立する原因となり,この種の対立は幼児期から大学生の時期まで続く。 (3)児童は親の権限を親という対象に付随させているのではなく、場面の性質との関連で概念化している。 (4)小学生から中学生にかけて自己決定権意識は強くなり,高校生の時期が最大となる。児童生徒の教師は子どもの行動全般について教師の権威を認めるのではなく、場面に応じた権限を正当化していた。 (5)中高生の教師と社会人は中高生以上に子どもの自己決定を許容すると考えている。 このように,幼児期から大学生までの子どもは,親や教師の権威に対して盲目的に反発するのではなく,また従順になるのでもない。子どもは場面の性質に応じて大人の権威を受容したり拒否したりする。個人領域の概念は幼児期に既に存在し,個人領域と慣習領域で自己決定権意識を発揮する。慣習領域での自己決定権意識は大人のしつけと対立する原因となり,この種の対立は大学生になっても続く。権威概念から見た子どもの道徳的自律は多元的な性質を有するものであることが示された。
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