平成9年度には、主婦を対象として、第1に環境に対する責任ある行動が実践されている実態、第2に環境に対する責任ある行動を測定するための内的整合性の高い尺度の開発、第3にその尺度を用いて若干の個人的変数と地球環境保全に関する態度との関係をそれぞれ検討した。環境に対する責任ある行動を測定するために28項目から成る4段階評定尺度を使用した。地球環境保全を支持する態度は6項目の5段階評定尺度によって測定した。これらの尺度を含む調査用紙を作成し、総合科学部学生の母親から郵送法により回答を収集した(174名 70.7%)。分析の結果、第1に、環境に対する責任ある行動の実践頻度は余り高くなかった。第2に、12項目から成る内的整合性のある尺度を開発することができた。第3に、環境に対する責任ある行動と地球環境保全を支持する態度の間にかなり高いプラスの相関が認められた。また、有職主婦に比べて、専業主婦が環境に対する責任ある行動の得点が高かった。しかし居住地の人口規模による影響は認められなかった。 平成10年度には、環境に対する責任ある行動を規定すると推測される心理的変数の影響を検討した。総合科学部の学生の母親に調査用紙を郵送して回答を求めた。心理的変数の測定には5段階評定尺度を使用した。その結果、219名から完全な回答が回収できた(回収率78.21%)。各変数について因子分析を行い、内的整合性に問題がないことを確認した。環境に対する責任ある行動を従属変数とし、7つの心理的変数を独立変数として一括投入して重回帰分析を行った。その結果、将来世代のための地球環境に関する懸念、慎重な購買態度及び自給自足指向が環境に対する責任ある行動を規定することが示唆された。しかし享楽主義、脱物質主義、地球環境の汚染と破壊がもたらす結果の深刻さに関する認知及び将来世代に対する責任には有意な影響が認められなかった。
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