研究概要 |
1.脳血管障害による大脳劣位半球損傷者(左片マヒ者)94名WAISの成績を過去に遡って収集したところ,VIQ健常群でも,VIQ境界群でも,VIQ>PIQが有意であり,注意・記憶因子に負荷量の高い下位検査の成績が劣っていた。さらに,因子分析の結果,絵画配列にのみ因子負荷量の高い第4因子(「状況判断」)が抽出された。大脳劣位半球損傷者は,絵画配列の成績も劣っていた。 2.中〜軽度の左半側空間無視を伴う不注意症状のみられる大脳劣位半球損傷者(左片マヒ者)1名に対して,自己教示訓練の1フェイズである外的自己教示(注意点の口頭による自己教示)訓練を実施したところ,訓練課題のみならず,検査課題においても,著しい改善がみられ,日常場面でも注意深く行動するようになり,復職を果たした。 3.状況判断の検出課題である4コマ漫画の再配列を行ったところ,4名の大脳劣位半球損傷者は,健常群20名が正反応を示した課題でも,誤配列が多く,正配列でも登場入物の意図を誤解していた。 4.状況判断に問題のある大脳劣位半球損傷者4名(27〜59歳)に対して,4コマ漫画の再配列訓練を行ったところ,3名では訓練課題の正反応率が高く(75〜100%),かつ未訓練の課題での正反応率も高かった(75〜80%)。 5.大脳劣位半球損傷者の行動特徴を表すエピソードを収集し,行動チェックリストを作成した。まず,項目の妥当性の評定をリハビリテーション関連職種32名に求め,残った32項目に対して46名の大脳劣位半球損傷者について評定を求めた。因子分析の結果,第1因子「思い込み」(寄与率40.6%),第2因子「おおまかさ」(寄与率7.5%),第3因子「安易な行動化」(寄与率6.5%),および第4因子「内省力の低さ」(寄与率4.8%)が得られた。
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