研究概要 |
本研究は,学級担任教師のリーダーシップを強化するリーダーシップ・トレーニング技法の開発を目的とする.福岡県田川市の教育委員会の強力を得て,3ヵ年計画の最初の2年は小学校教師を,最後の1年は中学校教師を対象とした. 小学校教師のリーダーシップ・トレーニングでは,平成9年度は7月と12月に,9小学校の4〜6年の児童(17学級,460名),平成10年度は6月と12月に4小学校の4〜6年の児童(10学級,310名)を対象に調査を実施した.調査内容は,担任教師のリーダシップ行動(20項目)とスクール・モラール(22項目),自己イメージ,児童のストレス,ストレッサ-等である.これらの結果を基礎として,平成9年度は10名の教師を参加者として,9月〜12月に,隔週(第1,3土曜午後)毎にリーダーシップ・トレーニングを7回実施した.内容は,講義,学級分析,自己分析,集団討議,相互評価,行動目標決定,集団決定,学級でのリーダーシップ行動実践,実践行動の振り返り等からなる.また平成10年度は,7名の教師を参加者として,1日コースのリーダーシップ・トレーニング(8月)と学級における自己研修(平成10年9月〜平成11年1月),2回の調査結果フィードバックを含むフォローアップ研修(2月)を実施した. 中学校教師のリーダーシップ・トレーニングは,前年度の1日コースを2日コースに変更し、5ヶ月の自己研修と,翌年2月のフォーローアップ研修を実施した.また,前年同様に2回の調査を,5中学校の1〜2年の生徒(15学級,489名)を対象に実施した.結果は次の通りである.(1)P,M2因子とスクール・モラール4因子との関係は,従来のPM研究と一致して,リーダーシップの効果性は,PM>M>P>pmの順位であった.(2)PMタイプとストレスの関係は,予想通りPM>M>P>=pmという結果であった.この関係は数量化理論第III類のパターン分類においても確認された.(3)P,M得点の有意な増加は確認できなかったが,学級雰囲気,いじめや仲間はずれの項目で,参加学級と不参加学級間に有意差が確認され,リーダーシップ・トレーニングの効果性が示唆された.
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