研究概要 |
(1)北海道から沖縄までの保健センターで実施された3歳児検診を通じて配布された「離乳様式の全国実態調査」の質問紙について,回収された回答937部のうち有効な923部について分析が行われた.その結果,母乳哺育を行う率は1歳を過ぎて急速に減少し,1歳半で極端に減少すること,2歳以降はほとんど見られなくなること,人工栄養は1歳と1歳半という節目の時期に停止される傾向が明瞭なこと,離乳食の開始は5か月にピークがあること,など明らかにされた.離乳の原因については「子の月齢」「子の食べ具合」「子の母乳離れ」など子の側の要因が多く,母親側の理由としては「母乳の出具合」が目立つ程度で,例えば母親の就労などの理由は少なかった.一方母乳以外のものを与えた理由としては「子の月齢」以外に「母乳の出具合」「母乳以外の味慣らし」と母親側の要因がより顕著であった.一方,離乳の主導性については,断乳したという母親が421名,子まかせで行ったという母親が142名で,離乳は母親主導で行われることが多かった.断乳か子まかせの離乳かの別は,居住地域・市郡別・子の性別・出生順・母親の就労・母親の学歴といずれも有意に対応しなかったが,断乳を選択した母親の場合,子の個性を尊重しようとする傾向が低く,離乳はなるべく早ければよいと思い,子よりも母親自身のために,子の様子よりも医療従事者の指導や自分の考えをもとに,子の行動よりも月齢を判断基準として母乳をやめていたことが有意に多いといった特徴が見られた. (2)これまでの桶谷式断乳の行動観察および質問紙調査,ラ・レーチェ・リーグの授乳・離乳の観察などの分析結果と,(1)の諸分析結果とを総合し,厚生省による離乳指導の改訂直前における離乳の実態とそこでの主導性のあり方について考察した.
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