視覚障害者用タイピング訓練システムについて、システムの試作及び訓練課題(データ)の選定、更に視覚障害者のタイピングの際の誤りとスピードについて、詳細な検討を行った。 タイピング文節数は、被験者間の違いが認められ、通常の訓練では、コンピュータの使用経験の違いを半年間では吸収できないことが明らかとなった。また、タッチメソッドが有利というわけでもなく、弱視者のように画面が若干でも見ることができる場合は見てしまう事があっても、大学生としての文書処理には大きな影響はないといえよう。更に、変換の誤りについてみると、全盲学生群では0〜7.55%、弱視学生群では0〜11.4%であり、同レベルの水準ということができる。 これらを参考にして、訓練データの作製を開始するとともに、システムの試作と、訓練データの組み込みを現在実施中である。システムについては、予算の関係により、ほとんどを現有機器を用いて構成した。なお、そのために人件費等の出費が予定を上回った。タイピング姿勢のビデオ記録とそのoff-line解析による身体各部位の数値化を目的としては、コンピュータへのビデオ取り込み装置、解析装置のインストールを行った。同時に、タイピング時の指の軌跡の解析ソフトを作成し、データの取り込みを行った。 一方、日本語文作成時の指の動きについての検討では、前述の軌跡の解析とともに、タイピング時にタイプするそれぞれのキーの回数について検討を行った。スペースキーの押下回数はがなり多いが、これは変換の際に用いられるものなので、除外した。最も多く押されるキーは、i.o.aの母音であり、それぞれ全体の一割を越えていた。これらに続き、u.nなどが多くなっている。日本語文作成における、これらのキー押下の特徴を考慮しながら、システム全体の構成を検討した。 総合的訓練システムは、第一にタイピング位置の習得、第二に日本語キー押下の特徴の把握、第三にタイピング速度の高速化の三段階とした。システムはOn-lineのミスタイピング指摘、自動的訓練速度の高速化を目的としたが、現段階では、一部Off-lineの教示システムに留まっている。前述の通り、訓練課題の選定に時間がとられており、この課題を解決の後、最終的なOn-line支援システムを作成終了予定である。
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