研究課題/領域番号 |
09610165
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会学(含社会福祉関係)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
水島 和則 東北大学, 教育学部・教育社会学講座, 助手 (00219627)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1998年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1997年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 就職情報誌 / 雇用から契約へ / 転職 / 高卒労働市場 / 離職率 / 高校内下位集団 / 中途就職者 / 非正規就業者 |
研究概要 |
宮城県内でもっとも大きなシェアをもつ就職情報誌の購読者層を対象に、1998年4〜5月に郵送調査を実施し、1997年に実施した調査との比較分析を行った。ちなみに有識者への聞き取り調査によれば、この地域で雇用状況が急激に悪化したのは1997年秋以降である。 主な知見は以下の通りである。まず、正社員希望購読者の属性を分析すると、 (1) 年齢では20代の購読者が男女ともほぼ半数を占めるが、30代以降の読者が増える傾向が読みとれる。男性では40歳以上の購読者が一割を越えた。女性では30歳代後半以降の読者が増加している。 (2) 男性の大卒読者が高い伸びを示している。高学歴層の転職志向者が増えていると推測される。具体的には男性で大卒購読者が2割以上を占め、専門学校卒業者の占める割合は16%である。高卒者はほぼ全体の半数である。女子でも、大卒者の割合が減って短大・高専修了者が増えることをのぞけば、ほぼ同様の割合になる。 (3) 現在の就業状況をみると、完全失業率が増加しているにもかかわらず、就職情報誌の購読層では離職中の読者比率が減少しているという興味深い結果が得られた。その一方で、正社員として就業している読者の占める割合も減少傾向にあるので、契約社員・派遣社員や、アルバイト・パート層の雇用市場が拡大していると理解される。無職者・離職中の読者が占める割合は男性で3割以上、女性で4割である。 (4) 転職経験がない読者は男性で四分の一、女性で三分の一。五回以上転職している者も男性では一割以上にのぼる。転職回数は増加傾向にある。また、男性の方が女性よりも転職回数が多い。 (5) 転職の意向をみると、「できるだけ早く」が男女とも五〜六割、良い企業があれば、と答えたのは三〜四割である。また、「新しい会社を探してからやめる」と答えたのが男性では四割、女性でも33%ともっとも割合が高い。 (6) 転職に際して重視する点は仕事内容と給与などの待遇。安定性と休日・勤務時間が同じ割合を占め、不況にもかかわらず休日・勤務時間を重視する者の割合は増えている。 次に、アルバイトやパート職を希望する者の属性をみると、 (1) 学生(高校生・専門学校生・短大・大学生)が男性では半分近く、女性では37%を占め、アルバイター・フリーターは男女とも三割を占めている。 (2) このアルバイター・フリーター層のうち、働く目的が「生活費」あるいは「生活費の補助」と回答したのは男女とも七割前後におよぶ。この層が就職情報誌に頼る不安定就業層と考えられる。 (3) アルバイター・フリーター層といっても、希望する勤務日数は週五〜六日。ただし勤務時間は五時間台、六時間台、七時間台がほぼ均等に分かれる。また、長期勤務を希望する層が三割を占める。 調査結果から性急な一般化は控えたいが、労働市場はきわめて多様化が進み、人材の流動化が進んでいる。ある有識者への聞き取りによれば、「雇用」を前提にせず「契約」という考え方でも働き方が定着しつつあり、資本関係のない会社同士が共同して社員を採用する動きもある。就職情報誌を介した労働市場は、従来の雇用制度とまったく異質な人事システムを拡大しつつあるといえる。
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