研究概要 |
本研究は,都市の社会的空間変容のプロセスについて,それを目的としあるいはそれに媒介されながら進行する関連諸主体(住民や行政,企業等)の相互作用過程との関連に着目して検討することを目的としている.この目的を達成するために,本研究においては関連する初領域における先行研究の整理・検討を踏まえたうえで,既存の統計データと独自の調査データを有機的に組み合わせた実証的調査研究を志向した。 初年度である昨年は東京都世田谷区について,社会的分化の実態を調べ,具体的な生活問題等を見出すために各種統計データを地区別(町丁目単位)に収集し,データベース化した。そして区内の各町丁目の性格を明らかにし分類するために多変量のデータ解析を試みて,9パターンほどの地区類型を得た。さらに地理情報解析システムを利用してこの各パターンを地図上にプロットしてみた。 2年目の今年度は,関連する研究動向や収集したデータについての分析を進めた。また,変容した都市空間の生活ニーズとして子どもの教育に関心を絞り,練馬区内の大規模開発団地である光ガ丘地区で住民や地区内の公立小学校教員に対するアンケート調査を実施した。同団地は完成後10年あまりたち,はやくも分譲住宅や都営住宅における住民の高齢化が進むなど,当初とは異なる社会的様相を呈しつつある。また,南北2km,東西1kmほどの地区内に8校も設置された公立小学校の間にも近隣住宅および住民の状況を反映した変容と差異化がみられる。これらの変容のプロセスについて今年度は重点的に考察を加え,関連する諸主体の関与の動態を実証的に明らかにした。
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