研究概要 |
本研究は、労働組織におけるジェンダー関係の再生産メカニズムを職務のジェンダー間分離に着目して解明し、ジェンダーに中立的なマネジメントの可能性を探ろうとするものである。そのために第一の柱として、女性労働研究史を整理する必要があった。そこでは、イギリスの研究水準に比して日本の女性労働研究が、特定の産業・企業・職場におりたってのケーススタディによる研究がほとんどないという点で決定的にたちおくれていることが明らかになった。本研究課題であるジェンダー間の職務分離を解明するためには、ケーススタディによる事実発見的な研究の蓄積が不可欠である。そこで本研究では、「総合スーパー」における店舗労働のケーススタディに取り組んだ。総合スーパーを選んだのは、女性労働への依存度が高い業種であること,近年女性活用への取り組みが進んでいることの2点である。総合スーパーX社への聞き取り調査および従業員へのアンケート調査、面接調査によって,店舗で働くさまざまな従業員諸層の労働実態、労働意識および労働関係を考察した。そこから明らかにされたのは、まず職場組織には、学歴、世代、キャリア、雇用形態といった諸要因のみならず、これにさらにジェンダーが関与して分離線が引かれている。このことが、女性の低い職位への集中と深く関連している。第二には、店舗間異動を繰り広げる層(店舗マネジメントを担う層)とほとんど異動しない層(店舗の労働ヒエラルキーの下層部にいる平社員男女およびパートタイマー)との間に大きな溝が存在することである。この溝を乗り越えるようなマネジメントでなければ組織の効率化を推進することは困難である。そのためにはジェンダーに中立的なマネジメントの可能性は、こうした労働組織のジェンダー分析によって探ることができる。
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