研究概要 |
第1部では,高度情報化社会における若者の社会化とコミュニケーションの問題を把握するために,高校生と大学生を対象にして,大量観察調査と,自由記述調査を行った。 大量観察調査からは,高校生から大学生にかけて,社会との関わりが増大したり,社会への関心がたかまるなどの社会化の進展が,生活やコミュニケーションのさまざまな領域で指摘できた。このことは,生活構造の違いによってもたらされていると考えられる。 また,この時期においては,性別によるコミュニケーションの特徴に違いが明確であり,女子のほうが意識,行為の両面において活発なこと,その背景には対人レベルのコミュニケーションが関連していること,また,発達に伴う変化は女子が連続的なのに対して男子は非連続的な特徴がみられた。 第2部は,日本の初期工業教育が産業化に果たした役割を考察している。「教育」と「経済発展」の間には常識的にも理論的にも,有意な相関関係が認められるが,典型として日本を取り上げ,産業化の初期段階の職業教育を分析している。 職業教育にはそれに先んずる初等教育の基盤研究が必要であるが,わが国の場合,すぐれた人的資源の整備があった。技能・技術だけではなく進歩向上への強い意欲である。 在来伝統産業(絹・漆器・陶磁器・木工等)に従事する次世代を育成することによって,地方の産業を維持し,やがてその基盤に立って独立国家としての自立と近代化を果たした。日本はその後の工業化によって発展途上段階を離脱するのであるが,日本の経験は東南アジアなどの諸国も参照しうるものであろう。
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