研究概要 |
海外帰国子女の学校生活や社会生活状況について,面談と調査票により実情調査をした結果,以下の諸点が明らかになった。児童生徒は,海外での学校生活を楽しみ,情緒的に安定し,様々な異文化に親しんでいた。彼等には,外国人の友達がおり,お互いの家庭で交流し合い,宿泊したりして交遊関係を広げ,自からが高次元の文化環境作りに重要な役割を果たしていた。日本人学校で学んでいた児童生徒は,帰国後の学習面での心配は少ない。補習校に在籍していた児童生徒は,国語,算数(数学)のドリルが週に1回(3時間の授業)程度のため十分な学力が身につかず,特に,高学年児童では経験の差が学力に影響していた。一方,補習校の子は,現地校やinternational schoolで学習し,同年代の各国の子と交流し,英会話を身につけ,異文化に抵抗なく接する習慣を身につけた。海外の学校では,遅れている教科には,個別指導システムがとられ,帰国後の学習への援助対策として,本システムに対する保護者からの要望が多かった。 海外に長期滞在した保護者は,学校選択について帰国子女関係の学校を望んでいるが,希望の学校へ入学できたのは1割程度である。地域別にみると関東,関西の居住者に希望者が多く,中国・四国・九州,北海道・東北の順であった。また,進学に関して,65%の保護者は小学段階は地域の学校で,高学年からは一貫校を希望し,16%の保護者が海外の大学を希望していた。海外在住歴2年未満の子の保護者の82%は,我が子が文化度の底辺を拡げ,かつ,異文化を習慣として身につけた生活経験を生かす意味で,帰国子女関係の学校よりは,通常の教育を希望している。さらに,海外在住歴が長いほど,帰国後の学校適応に時間がかかり,かつ,高学年になるにつれ学校適応への保護者の不安傾向が強い。 本研究により,帰国子女の教育関係者への有益な資料を得ることができた。
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