研究概要 |
知的障害を持つ高齢者を対象にしたQOLの概念の定義を試み,面接法と質問紙法によるQOL測定の可能性を探った. QOL概念の定義について:QOLはこれまでさまざまに定義されてきた.しかし,客観的に評価可能な側面(客観的QOL)と個人の主観的な生活感情を含む側面(主観的QOL)があるという点ではコンセンサスが得られている.後者については,生活満足度,幸福感,心理的安寧状態(well-being)といった類似した概念と区別することが難しい.そこで,QOLを定義すると,身体的・心理的・経済的・社会的な状態と,それらに対する主観的満足度の両方を含む多面的・多次元的結果指標であると言える. 面接によるQOL測定の試み:施設入所高齢知的障害者を対象に面接によるQOL測定を試みた.方法は,施設内での生活全般の状態とそれに対する満足度に関する質問を中心にした半構造化面接で,集団面接,個人面接の2段階で実施した.これまで知的障害者から直接情報が得られない場合には介護者から情報が得られることが多かったが,集団面接によって対象を良く知る同僚の知的障害者が有益な情報源として機能することが明らかにされた. 質問紙によるQOL測定の試み:知的障害者を主な対象とするQOL質問紙の中で最も代表的な存在であるQOL.QとComQol-I5を検討した.QOLの定義に微妙な違いがあり,手法や手続きにも違いがある.また,我が国で使用するためには,アメリカあるいはオーストラリアと日本との文化差についても考慮が必要である.
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