愛知県南知多町の篠島において、シラス漁の漁師自身が漁獲行動を記録し続けた「漁業日記」(1968年〜1991年)について記録・整理するとともに、篠島のシラス漁を中心とする漁業を報告した。篠島のシラス漁は、シラス(和名カタクチイワシ)とコウナゴ(和名イカナゴ)を漁獲対象として、2艘が網を曵いて漁獲する網漁である。その作業手順を理解する中で、運搬船による乗組員移動とシンドという網上げ作業が重要であることを述べた。乗組員移動による漁獲フォーメイションとシンド上げについては従来報告されていなかった。「漁業日記」のうち、1968年から1970年の3年分の全内容を対象として、月日、気象、漁獲行動の内容(漁場名、網入れの方向、漁獲量、魚名等)などの項目により表化し、数量的資料については統計化して示した。また、漁獲行動にかかわる民俗知識の聞き取り調査によって得られた伝承資料と対比し、日記に登場する漁場名については、すべて地図上で確認して図示した。漁場利用を沿岸地名の利用頻度数という形で抽出することによって、漁場利用の季節変化を、沿岸地名の利用頻度数の推移として表した。その結果、篠島のシラス漁の1年間の漁獲量・高推移から、3月のコウナゴ、5月前後のシラス、10月前後のシラスの漁期にピークができるというパターンを見出した。その漁場利用は、3月のコウナゴは三河湾・伊勢湾の内湾全体、5月前後のシラスは渥美半島大山以東、7月8月は渥美半島全体に広がり、10月前後のシラスは渥美半島大山以西から三河湾・伊勢湾内湾入り口となっていた。漁獲パターンに対応して、漁場を季節的に変化させているのである。また、「漁業日記」のうち、1968年、1978年から1980年分については、その全記載内容を翻刻して掲載し、1968年分については注釈を付した。
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