本研究の目的はデンマーク絶対王政の確立過程を明らかにした上で、その性格を考究しさらに確立時期を明確化することであった。デンマークではまず、1660年10月に世襲王制が成立し、翌年1月に今度は絶対王制が導入されるに至った。特徴的なことは、デンマーク絶対王制は他の西欧諸国の如く王権神授説に基づいて国王が導入したものではなく、諸身分より国王に与えられた形式を取っているのである。 また、フレデリック三世治世後期(1660-70)には合議制を採用する中央行政官庁の設置、地方行政機構におけるアムト制の導入、貴族の影響力を低下させる身分特権勅令の公布、新土地税制や徴兵制の実施が行われた。なかでも注目に値するのは、1665年に「国王法」なる法律を制定して新制度である絶対王制の安定化を図ったことである。この絶対王権を法律で規定したところにデンマーク絶対王制のなによりの特徴がある。1670年より始まったクリスチャン五世治世下(1670-99)では、最初、市民出身のグリッフェンフェルドが中心となり新貴族性創設、位階制導入等を通じて、旧デンマーク貴族を疎外し、絶対王権に都合の良い帰属性を確立していった。この後デンマークは宿敵スウェーデンとのスコーネ戦争(1675-79)では結果的に破れ、以後内政を充実させる方向を歩む。正確な全国検地に基づく土地登録が実施され、さらに体制維持の為に全国的な警察組織も設立された。1683年には史上初の全国法である「デンマーク法」が制定され、以後のデンマーク(絶対主義)社会を規定していった。以上みてきた政策を考慮すると、デンマーク絶対王制はクリスチャン五世治世(後期)に確立したといってよいであろう。 なお、本研究に関する関連年表はhttp://www.htokai.ac.jp/KOKUSAI/hoppou/saho/nenpyou.htmを参照。
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