期間中以下のように論文を発表した。 音韻学については「訓詁学研究ノート(1)」「訓詁学研究ノート(2)」により、カールグレン・陸志韋・董同〓・李方桂の五つの研究を取り上げ解説した。関連論文として四十種ほど引用した。中古音は、代表的にカールグレンの再構音を示し、重紐になお問題を残していることを示した。上古音についてもカールグレンから李方桂に至るまでの学説の変化をたどり(1)上古韻がおおむね22部に別れること、(2)諧声符を基礎に上古の声母の再構を行うが、実際には相当複雑で、複子音を設定するにも研究者によって見解の開きがかなりある、等のことを示した。 訓詁学については「訓詁学研究(3)」で楊樹達の『古書句読釈例』を取り上げ、関連文献として20種ほどの文献を引用し、解説した。句読とは文章の区切りであるが、古来軽視され付されなかった。これにたいし楊樹達は重視して百八十条の誤まった句読の例を取り上げている。「訓詁学研究(3)」ではその中の代表的なものを取り上げ詳細に検討し紹介した。「訓詁学研究(4)」は、斉佩〓の『訓詁学概論』の内容を各章各節のそってできるだけ詳細に紹介したものである。引用された訓詁学史上の重要な文章には書き下し文を付して解説した。また「音通」などの音韻学上の問題については、現代の音韻学の成果による新しい推定音を付しできるだけわかり易いようにした。このようにして引用した文献論文は、数十種に及ぶ。 訓詁学に関連する文字学についても、文献の解説・解題を試みたが成果を発表するにはいたらなかった。今後の課題である。
|