研究概要 |
本研究は(1)ブロンテ初期作品研究(2)ブロンテ書簡研究の2部で構成されている。 (1)は、『ブロンテ初期作品の世界』(単著、開文社、1989)の出版を中心とする出版物7点、学会誌4点(内3点は英文)、口頭発表4件(内2件は国際学会)の成果を上げた。日本における初めてのブロンテ初期作品に関する研究書に続いて、『秘密・呪い---シャーロット・ブロンテ初期作品集I』(鷹書房弓プレス、1999)および『未だ開かれざる書物の一葉---シャーロット・ブロンテ初期作品集II』(2001)を監訳した。みすず書房の『ブロンテ全集』中の『アングリア物語』(第11巻、1996)と合わせると、ブロンテ初期作品集のかなりの部分の邦訳がそろい、今後のブロンテ研究に資するところ大である。 (2)では、1829年から1843年までのシャーロット・ブロンテの書簡を翻訳し、注を施した他、最新の伝記研究の成果を紀要によって報告した。翻訳にあたってはMargaret Smith ed.,The Letters of Charlotte Bronte,Volume One,1829-1847(Oxford:Clarendon Press)を使用した。従来用いられてきたワイズとサイミントンによるシェイクスピアヘッド版の書簡が出版されてから半世紀あまりが経過し、新たな書簡の発見や日付けや宛名の間違いも指摘され、新たな編集が待望されていた。クラレンドン版では詳細な注も施され、すでに完了したブロンテ作品集とともに今後のブロンテ研究における定本になることは確実であり、その翻訳の意義は高い。 以上、ブロンテ研究において未開拓であったブロンテ初期作品の研究、および新版のブロンテ書簡の翻訳研究という本研究の目的は充分に達成されたものと確信する。
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