研究概要 |
本研究では、およそ3,000言語まで語順データを拡大し、それらを系統別に分類し、世界の各地域別に語順分布地図を作成していった。その結果、語順データ、系統別語順分布表、語順地図のいずれにおいても、世界で最大規模のものを完成させることができた。そして、それらの分析を通じて、以下の点を実証することができた 言語類型地理論的に見れば、整合的VO型、整合的ないし準整合的OV型という、2つないし3つの語順類型のみが地球上で大きな連続的まとまりを成して存在している。不整合的語順を持つ言語は、たとえ数の上では多数存在しても、そのいずれか一つのタイプのみでそのような大きなまとまりを成して分布している地域はどこにも存在せず、それらは、異なるタイプ間の言語接触や、別の語順タイプへの変化というような、地理的ないし歴史的な要因を負いながら、整合的タイプの周辺に存在している。したがって、やはり整合的語順類型というものが、人類言語にとって基本的、理想的、原型的なタイプとして存在し、不整合的語順類型は、整合的タイプの周辺域にしばしば推移的に存在するタイプと考えられる。 また、現在は、整合的なOV型とVO型とが、ほぼ同等に地球上に分布している。しかし、歴史的に見ると、かつては、大部分の地域がSOV型語順の言語で占められており、VO型の地域というのは、大語族が拡大を始める新石器時代に入る以前は、きわめて限られていた可能性が高いと思われる。 本研究の成果は、すでに数本の論文として発表することができたが、今後は、語順の地理的、系統的分布をさらに綿密に研究し、著書の形にしていくことも考えている。
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