本研究の課題は、民間企業における雇用の弾力化および人事管理の多様化の進行が、公務部門の任用及び人事管理にどのような影響を及ぼしているかを考察し、公務員法制における今後の任用・人事管理制度の法的枠組みを検討せんとするものであった。 公務における任用、とりわけ採用については、全体として、民間企業におけるような多様化はみられない。ただし、国家公務員をみるかぎり、多様化の法的枠組みが着々と進行していることは、注目される。すなわち、1997年施行の「任期付研究員法」及び2001年施行の「新再任用制度」等は、その典型であり、公務員の任用期間、勤務形態および処遇の多様化を推進するシステムとして注目される。かかる多様化は、公務員法における公務員像を大きく変容させる契機となりうる。この結果、多様な公務員を現在のような画一的な公務員法で律することが果たして合理的か否かが今後の立法政策上の課題となろう。 次に、採用後の人事管理についてみると、民間における業績評価制度の導入に比べると、公務部門においては、著しい遅れがあることは否定できない。もっとも1999年の「公務員制度調査会」の報告等を受けて、職員の勤務評定を積極的に実施し、その結果を昇進(昇格)および給与に連動させるための研究が推進されつつある。しかし、こうした処遇の多様化、弾力化を推進するときの「障害」は、現行公務員法が採用している「勤務条件法定主義」の原則である。この原則が存在する以上、業績評価制度の導入も民間企業ほど容易ではない。以上のように、公務における任用および人事管理の弾力化を積極的に推進するには、現行公務員法の根本的な再検討が必要となろう。
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