1.本研究の目的 本研究の中心的な目的は、「東北の三大再審無罪事件における、血液型鑑定を中心とする、誤判原因」の解明、少なくとも、そのための論点整理である。「東北の三大再審無罪事件」とは、1949年発生の弘前事件、1952年発生の青森事件(米谷事件)、1955年発生の松山事件である。 2.本研究の成果 (1)青森事件の誤判原因の一つとして、被告人の唾液のS式血液型鑑定に誤りがあった可能性が大きいこと(鑑定の証拠価値の限界)を確認した。他方、分泌型の体液班の場合には、十分な量の検体があり、適確な専門家によって検査がされるなら、ほぼ確実なABO式及びS式血液型の判定が可能といえること(限界にも限度があること)も分かった。 (2)弘前事件の主たる誤判原因について、渡部博士は、血痕でないもの、少なくとも、人血でないものについて人血、しかも、被害者と同じBMQE型の人血という鑑定がなされた可能性があるという見解を表明している。本研究の結論も基本的に同一である。M型、Q型、E型の各血液型鑑定結果の確実性にも疑問がある。弘前事件におけるQ式、E式血液型鑑定は、科学的証拠の証拠能力の問題のわが国における重要性を示す一例である。 (3)弘前事件、青森事件の考察を通して、松山事件の血痕鑑定をめぐる誤判原因を考察する上で、重要な視点(「血液鑑定の証拠価値の限界」)が得られた。 3.今後の課題 東北の三大再審無罪事件を含む、重刑再審無罪事件の誤判原因の解明のためには、学問的実証的な共同研究が必要である。本研究はそのための、一つの予備的研究である。
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