研究概要 |
1. 選挙区制に関する内外の諸研究の特徴および問題点を析出する作業を行い,英文のリビュー・アーティクルとしてまとめた.中選挙区制研究には,候補者中心の選挙や優位政党内の候補者競合が,政党組織や政治過程にもたらす影響を分析・考察するアプローチがある.他方で,単記非委譲式投票(SNTV)の持つ特性に注目すると,政党は,各選挙区で適正数の候補者を擁立し,各候補の得票を均等化することにより,ドント式比例代表制下における議席を確保することができる.そこで,自民党が長期政権を維持できたのは,結局,こうした候補者の調整に成功したためであると考えるアプローチがある.両者のもっとも大きな違いは,前者が政党の役割ないし能力を低く捉えるのに対して後者がかなり高い評価を与えていることである. 2. 自民党政権における内閣閣僚の派閥均衡人事と年功序列人事の慣行の成立に関する研究を,英文で執筆し,米政治学会1998年次大会で報告した. 3. 55年体制における立法過程がどのように形成されたかを分析するために,1950年代に活発に行われたがその後衰退した議員立法の変遷に注目し,第1回国会から第31回国会の期間における衆議院議員提出法案について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,本会議議決,修正・否決の場合の回付,および衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などを含めたコンピュータ分析用データファイルを作成した.この議員立法データを活用して,予算を伴う議員立法が55年体制における与党の自民党からの提案が抑制されていく過程を,1955年の国会法改正過程における大蔵省や内閣法制局の議員立法制限規定に対する意見や,予算編成過程などと関連づけて分析を進め,口頭報告した.論文にまとめるよう進めている.
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