1. 海外での研究開発活動が国内での研究開発活動に与える影響を調べるため、前者を主な説明変数とし後者を被説明変数とする式をマイクロデータを使って推定した。親会社の研究開発総額の変化を被説明変数とした推定では欧米、その他世界における研究開発支出のそれぞれの増加はともに本社の研究開発費を増加させることがわかった。これに対して、本社の基礎研究の変化及び開発研究の変化を被説明変数とした場合には、正の有意な関係は見られなかった。とくに欧米での研究開発が本社の基礎研究支出に与える影響については一部有意な負の効果があるとの結果を得た。 2. 製造業向け直接投資がなぜ起きるか、投資母国にどのような影響を与えるかを理論的に考察したあと、日本の製造業向け直接投資が日本経済にどのような影響を与えているかをさまざまな視点から実証的に分析した. 3. 企業の研究開発活動が社会の技術知識全般を改善し新たな研究開発を容易にするという一種の外部効果を持つため成長率が内生的に決定される2国モデルを前提にして、生産活動の海外移転が国内の技術知識の蓄積に与える影響を分析した。分析の結果、生産の海外移転により技術知識ストックの持つ外部効果が移転先の海外で生じる場合と、生産が海外移転されても外部効果が投資母国にとどまる場合では、直接投資が2国の経済成長に与える影響が極めて異なることがわかった。前者の場合には直接投資のより投資母国企業とホスト国企業間の技術格差は縮小していくのに対して、後者の場合には技術格差は拡大し、やがてはホスト国企業のみが世界の生産を担うようになる。
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