研究概要 |
本研究では,1970年代半ばより台頭し始めた国際政治経済学(IPE;International Political Economy)アプローチの諸潮流を整理し,グローバル化=ポスト冷戦期における各国の通商政策(対外経済政策)における変化について考察した。冷戦後という政治環境の変化とグローバル化という経済環境の変化は,「主権国家」と「国民経済」という従来のアプローチの前提を突き崩す事態を生んだ。本研究では,(1)IPEアプローチの検討を通じて,(2)グローバル経済下における国家政策の可能性と,(3)地域経済統合を中心とした通商政策について考察した。本研究は,I.現状分析の深化,II.国際政治経済学の諸潮流の整理,III.グローバル経済化下における国家と市場(国際政治経済学の独自領域としての基礎づけ),IV.通商政策(対外政策)決定に関する理論仮説の検討に区分できる。 I.については,(1)冷戦後の地域経済統合の展開と,(2)97年7月東アジア通貨危機,97年10月と98年8月の世界同時株安の起源にさかのぼった考察を中心に行なった。研究期間終了後に刊行予定の著作で,補完的考察を追加する予定である。II.とIIIにつぃては,IPE研究の第一人者と目されるS.ストレンジの著作『国家の退場-グローバル経済の新しい主役たち』(Strange,S.,The Retreat of the State:the Diffusion of power in the world economy,Cambridge University Press,1996)の翻訳を行ない,検討を行なった。遺著となった『マッド・マネー』(Mad Money,Manchester University Press,1998)の翻訳も近刊予定である。IV.地域経済統合を中心としたグローバル経済下における国家政策を説明する諸仮説としては,冷戦後の地域経済統合について「スパイラル化」と説明した96年の拙稿と同時期に,「地域主義のドミノ化」仮説を提起したR.ボールドウィンの議論が有用だった。
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