平成9.10年度の研究成果の概要について述べれば、 (1) 戦前・戦後の先行研究を踏まえて、その批判的検討に努め、 (2) 特に、戦後の岡本幸雄氏らの努力に関わる「地方紡績企業」や「明治期紡績技術」の研究成果を吸収・批判しつつ、「鹿児島紡績所」の操業以降、明治廿年代初頭までの研究成果の一部を「鹿児島紡績の成立と展開(上)」として『専修経済学論集』第33巻第3号(1999年3月刊)に発表した。 (3) さらに、両年度亘る資料収集によって、明治十年代後半から明治二十年代末葉までの「経営資料」・「営業費計算」関係のデータをも計算・加工して、島津家家産でもあった「鹿児島紡績所」の具体的な動態の跡を再構成してみたい。 (4) 鹿児島紡績所の「分工場」ともいうべき「堺紡績所」についても、堺市での資料収集は不可能であり、上記資料からの追求に期待する他はないのが実状であって、「鹿島紡」についても、絹川氏の先行業績以上の追求は今後に待たざるをえない。 (5) かかる制約を十二分に考慮したうえで、改めて「二千錘紡」の再検討が行われるべきであろう。
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