研究概要 |
本研究の実施期間である,1997年度から1999年度は,いわゆるアジア通貨危機と期間が対応し,この結果,本研究は非常に興味深いものになったと同時に非常に実施しにくいものともなった. 日本とアジア諸国(特にアジアNIES)との経済関係の緊密化に伴い,実物部門の経済関係ばかりではなく,金融部門の経済関係の緊密化をも視野においた分析が必要であるという当初研究計画の主張は,アジア通貨危機の発生により,十分に意味のある主張であることが裏付けられた.一方こうした分析を行っていく上で,日本を含むアジア諸国の金融制度は,国際標準的な金融制度とは,国によって程度は異なっているとは言え,現存しておりこれらを正確に認識することが重要であるという主張も,この間に推移によって意味のある者であることが明らかになったが,通貨危機発生以後,日本における金融ビッグバンの進展や,通貨危機発生国に対するIMFの介入等もあり,制度自身に大幅な変更が加えられ,どの時点で何を評価することが適切であるかの判断がきわめて困難になった. 上記の状況と併せて,通貨危機の発生により,それまでの経済構造に変化が生じ,本研究で目的とした,計量経済学的手法による分析がきわめて困難になった. 上記の状況を反映し,今回の研究成果は暫定的なものとならざるを得ず,今後一層精細な検討を行って,分析結果を再評価することが必要になっている. 本研究では,まず各国の金融制度との比較の観点から,日本の金融制度の骨格を整理し,その上で最近時点における日本金融システムにおける問題点の整理と改革の方向性を整理した上で,各国における同様の状況を整理しつつ,マクロの経済活動と金融市場の結節点である,貨幣需要関数の推定を通して,アジア通貨危機発生以前を中心とする実証分析の結果を得た.
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