研究概要 |
本研究は,まず先行研究や典型的な事例研究から次のような認識仮説を導く.情報システムの成否は,情報技術そのものよりもむしろ人的・組織的要因が大きく影響する.情報技術を駆使しようとすればするほど、人的・組織的情報機能を駆使しなければならない.情報技術と人間による情報機能との整合性が存在しなければ、如何に優れた情報技術を駆使する情報システムであろうと、さほどの効果がない. これらの認識仮説の妥当性は、先行研究のサーベイと本研究での実証分析により検証された.また当該仮説は、とくにわが国の情報システム実践を前提にしたが、米国でも共通して存在する「一般特性」であることが明らかになる.そして、人的・組織的要因を所与として自己完結的に情報技術による情報システムを構築する方法論には限界があり,情報システム研究・実践の基本的枠組みは、企業情報システムは、「情報技術による情報システム」と「人間による情報システム」によって構成し、後者は,少なくとも「マニュアルベースの情報システム」、「情報共有と組織学習のメカニズム」、「組織文化」によって構成し、システム構築方法論は,この基本的枠組みのなかで再構築されるべきであることを明らかにする. また本研究の過程で大きなうねりとなったWeb環境におけるビジネスプロセス革新活動も情報システム視点から分析すると,コア・プロセスのみを情報通信技術によって高度化するのではなく,顧客自らが「関係性の自己管理」をする機能の組み込みと,脇に追いやられた「人的・組織的プロセス」をいかにコア・プロセスに関係付け・転換するかが鍵になることを明らかにする.そこでも、まさに本研究で検証された仮説のもとでいかに両システムの整合性の論理が有効であることを明らかにする.
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