研究概要 |
この期間の研究の成果の最大のものは,Hilbert保型形式に伴うp進表現の研究である.Hilbert保型形式fに伴う総実代数体Fの絶対Galois群の2次元l進表現を考える.lを割らないFの有限素点に対しては,この表現のυでの分解群への制限が定めるWeil-Deligne群の表現が,fが定めるGL_2(A_F)の保型表現のυ成分と,局所Langlands対応により対応することが,適当な条件のもとCarayolにより示されていた.最近のp進Hodge理論の発展の成果を使う事により,同様のことを,υがpを割る場合にも定式化し証明することができた.代数体FがQの場合には,このことはそれ以前の研究で示した事であったが,その方法の進化形を調べる事により,一般化することができた.10年度はこの結果を論文にまとめ,論文はあと少しで完成の予定である。この研究の中で,保型形式にともなうGalois表現については,monodromy-weight予想が成り立つことも同時に示せた.これはF=Q,p≠lの場合にも気づかれてなかったようであり,この場合については論文を書き上げ投稿した. 他にも次のような研究を行い成果があった.体K上の偶数次元の代数多様体Xに対し,そのl進cohomologyの2次Stiefel-Whitney類が定義体Kの2次のGalois cohomology H^2(K,Z/2Z)の元として定義される.この類とde Rham cohomologyのHasse-Witt類の間の関係を予想として定式化し,それを次のいくつかの場合に証明することができた.1.体KがQの代数閉包を含む場合.2.KがRの場合.3.Kが局所体でXがよい還元をもつ場合.4.Xが超曲面で{2,d}=0の場合.
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