研究概要 |
我々の目的は,有限群のコホモロジー環の可換環論的性質を調べることである.定理の予想及び検証のためには計算機が不可欠である.海外ではCarlsonがソフトウェアMAGMAを用いて,有限群のコホモロジー環の研究を精力的に行っている(http://www.math.uga.edu/〜jfc). 1. essential idealとは有限p-群のコホモロジー環において,Brauerの貼り合せの原理(部分群の族に制限して考える)では捕らえることのできない元全体のなすidealのことである.「essential idealの2乗は0(trivial multiplication)であろう」というMui氏の予想(1982)があるがまだ解かれていない.研究代表者は,可換環論用ソフトウェアMacaulay2及びSingularを用いて,有限可換2-群のコホモロジー環のessential ideal及びその準素分解を計算した.この結果は手でも証明できる. 2. 有限p-群がSwan群であるとは,それをSylow群に持つ任意の有限群のコホモロジー環を計算するのに,Brauerの第1主定理の方法(Sylow群の正規化群に制限する手法)が使える群のことである.Henn-Priddyによると,ある種の見方をすればほとんどすべての有限p-群はSwan群であるが,Swan群の分類を実際に行うことは非常に難しい.Swan群をSylow群に持つ有限群のコホモロジー環を計算するには,Sylow群の正規化群に制限した後,Sylow群のコホモロジー環の補群による不変部分環を計算すればよい.研究代表者はSingular付属の不変式計算用のプログラムfinvarを使って,Swan群をSylow群に持つ有限群のコホモロジー環をいくつか計算した. 平成9年度は計算機による予想を,平成10年度は計算機による検証を行った.この間,計算機と平行して手計算による証明を考え,また証明の手直しを行った.
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