研究概要 |
リーマン幾何学の測地線の幾何学においては,ほとんどの結果が,ヤコビ微分方程式とリッカチ微分方程式の応用として得られている.この点に注目すると,これらの微分方程式に対して確立された理論を応用できる対象は,勾配流,自然なラグランジュ力学系,ホイヘンスの原理が成り立つ力学系,フィンスラー幾何学,ビリヤード問題,マグネティック流,境界付きリーマン多様態をその境界で貼り合わせてできる貼り合わせ多様体上の幾何学等である.これらの対象に応用する際に,リッカチ微分方程式の大域解の一意性が重要であった. 行列値リッカチ微分方程式の対称解は,その定義域が実数全体であるとき,良い性質を持っている.様々な場面で,このような解の存在と一意性が問題となる.特に,平行線の理論と解の一意性が深く関係している.本研究においては,解の一意性に関する理論を発展させ,平行線の理論に応用し,その平行線の理論を用いて多様体の位相構造や幾何構造の研究を行った. 平成9年度には,貼り合わせリーマン多様体上の測地線に沿うヤコビベクトル場の挙動についての研究と勾配流と多様体の位相構造・幾何構造の関係についての研究に成果をあげた.平成10年度と11年度には,平面凸ビリヤード問題に対して,配位空間での平行線の理論とユークリッド平面でのヤコビ場の理論を応用して成果をあげた.例えば,平行線による層構造の存在とコウスチック連続性の関係を明らかにした.また,坂井宏之(博士前期課程の学生)の協力により,貼り合わせリーマン多様体上のラプラシアンの固有値と幾何構造との関係に関する研究に対しても成果をあげた.
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