研究概要 |
2次元円板をそれ自身に移す埋め込み写像に対し,その周期点集合の位相的構造について,周期点の位相不変量の一種である組みひも不変量を用いることにより研究を行い,以下に述べるような成果を得た. 1.サーストン理論により,位相的に複雑な(即ち,組みひも不変量の分解において擬アノソフ成分が存在する)周期点の存在が無限個の周期点の存在を導くことが知られている.周期がn以下である周期点全体の集合P(n)の位相的複雑さが周期点の個数に与える影響について調べ,P(n)の個数は2n+3個以上であることを示した. 2.P(n)が2n+2個以下の元からなる場合,上で示したことにより,その組みひも不変量の成分はすべて単純型であることが分かるが,この事実を用いて,P(n)の組みひも型の取り得る可能なタイプを完全に決定した. 3.写像の不動点について,以上の考察とは異なった視点から研究を行い,以下の成果を得た. (1)組みひもの概念を用いて,不動点全体の集合にある種の同値関係を導入することができることを示し,さらに各同値類の組みひも不変量はすべて平面の回転から定まるツイスト型であることを証明した.従って,不動点集合は単純な構造をもつ有限個の部分に分解され,不動点集合の構造を決定する問題は,各同値類の性質を調べる問題,及び同値類相互の配置関係を調べる問題という2つの部分に分けられる事が分かった. (2)同値類の性質を調べる問題を扱い,各同値類の不動点指数は1以下であることを示した.この結果を用いて,不動点の位相的性質と安定性との間の関係を調べ,2個以上の元をもつ同値類は必ず不安定な不動点を含むことを示した.また,不安定不動点をふくむ同値類の個数は,含まない同値類の個数より大きいことを示した.
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