研究概要 |
当該研究期間に得られた結果を論文別に分けて解説する. 論文(i)では,絡み目のHOMFLY多項式の定義を,初等的に,かつ組み合わせ的に与えた,(ii)では,絡み目の多変数Alexander多項式をVassiliev不変量の立場からとらえなおし,多変数Alexander多項式から導かれるweight systemの再帰的な定義を与えた.(iii)では,渋谷氏によって導入された,結び目コボルデイズム不変量である4次元clasp数を研究した.彼はこれが4次元種数以上であることを示し,等号の成り立たない例があるかという問題を出した.この論文では,この問題に対し,実際に等号の成り立たない例を構成した.(iv)では,リー群SU(2)および1のr乗根に付随した3次元多様体の量子不変量を考察した.この不変量は,rが偶数のとき,その多様体の2を法とした1次元コホモロジーの元に対しても定義される.この論文では,有理3球面の自明なコホモロジーの元に対して量子不変量を計算し,それらが,円分整数になること,Casson-Walker不変量を決定することなどを示した.(v)では,V.Vassiliev氏により導入された,結び目全体を基底とするベクトル空間のfiltrationに対応して,Seifert行列全体を基底とするベクトル空間にfiltrationを導入した.また,このfiltrationとAlexander多項式との関係を明らかにした.(vi)では,大槻氏により導入された整係数ホモロジー3球面の有限型不変量に関して,任意に与えられた次数以下の有限型不変量がすべて自明であるが,3次元球面とは異なる双曲的3次元多様体を構成した.(vii)では,(iv)に引き続き,今度は非自明なコホモロジーの元に対応した不変量を研究した.残念ながら,今のところ,円分整数に値を持つことしか証明されていない.Casson-Walker不変量との関係は今後の課題である.
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