研究概要 |
数理物理学に現れる偏微分方程式および自己共役作用素,特に線形・非線形のシュレーディンガー方程式と非線形波動方程式,およびシュレーディンガー作用素ならびにパウリ作用素のスペクトル・散乱理論に関する研究を関数解析,実関数論あるいはFourier解析,ならびに超局所解析などの手法を用いて集中的に行った。その結果次のような新たな知見が得られた。 1. 調和振動子の一次関数より早く増大する摂動をもつ時間依存型シュレーディンガ一方程式の基本解は必ずしもreccurence of singularityの性質を持たないことが初めて明らかにされた。 2. 滑らかでないポテンシャルをもつ時間依存型シュレーディンガ一方程式の基本解も適当な条件のもとに有界かつ連続になり,これによって解作用素に対していわゆるStrichartz型の評価がこれまで知られてきた条件より一般に成立することが明らかになった。 3. 非一様な磁場を持つ2次元Pauli作用素に対する零に集積する負の固有値の漸近挙動を解析し磁場の効果を明らかにした。 4. 2次元領域における磁場中の量子に対する散乱理論を展開し,特に低エネルギーにおける磁場の影響を明らかにするとともに,磁場の局所的に集中のさいの収束の様子を明らかにした。 5. 磁場をもつシュレーディンガー作用素に対する準古典近似を行いこの場合のトンネル効果の大きさを解析し,磁場の効果がその滑らかさに大きく依存することを明らかにした。 6. シュレーデインガー作用素のspectral shift関数の準古典近似がtrapping energyの近傍において如何に振る舞うかの詳細を初めて明らかにした。 7. 異なる伝播速度をもつ非線形波動方程式系においてStrichartz型評価式が回復するか否かを調べ,臨界指数をもつ非線形波動方程式の初期値問題の適切性との関連を明らかにした。
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