研究概要 |
研究代表者(加藤)の主要な研究方向は,3次元空間の有界領域におけるNavier-Stokes方程式に対する初期境界値問題および周期解問題である.初期境界値問題に対して時間的に大域的な一意解の存在問題は今尚未解決のままである.代表者は,Navier-Stokes方程式の解の「時間大域的存在」と「速度勾配」との間に深い関係があることに注目し,新しい方程式:「‘non-Newtonian'を伴うNavier-Stokes方程式」を思い付いた.この方程式を手がかりに ●任意に与えられた初速度(大きさの制限はない)からスタートしたNavier-Stokes方程式を満足する解は,その速度勾配が大きくなる時‘blow up'しないで、non-Newtonian方程式を満足するように自然に切り替わって無限時間にわたって存在し続ける,しかも時間が十分経ったある時点からは,ずっとNavier-Stokes方程式を満足する,そのような解の存在を証明した(文献Kato[2],[3]).上で構成した解が,t→∞に対して定常解に近づいていくことを調べた(文献Kato[4]).今後,任意のKに対して,速度勾配がKに等しいような初速度関数で,しかも「Temamの条件」を満たさない程度に大きい初速度に対する「時間大域的強解」の存在証明を目標としている. 周期解問題に対しては, ●「外力」に大きさの制限をcriticalなもので与え(現在のところではbestだと思う),Navier-Stokes方程式に対するperiodic solutionの存在を証明した(文献Kato[1]). 研究分担者は,非線形波動方程式のエネルギー減衰問題および大域解の存在問題を研究した.後者については精密なエネルギー減衰評価を応用する形の問題を考察した.外部問題の局所エネルギーの減衰問題についても興味深い事実を証明した(文献Nakao[1]-[6]).また,多変量正規分布における平均の信頼領域を2段階法を用いて構成し,その漸近的性質について考察した(文献Hyakutake[1],[2]).
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