研究概要 |
1. ノルムの一様凸性や微分可能性を導き「バナッハ空間の幾何学」の原点とも云うべきClark-son型不等式を一般のバナッハ空間で考察し,次の結果を得た。 (1) Clarkson型不等式とtype,cotypeの関係を明らかにした。特にClarkson,一般Clarkson,ランダムClarkson不等式など一連のClarkson型不等式をtype,cotypeで特徴づけた。 (2) Clarkson型不等式のXからL,(X)への遺伝性を明らかにし,従来の結果を統一的に導いた。 2. ノルムの歪みの度合いを表すvon Neumann-Jordan定数(NJ定数)について次の結果を得た。 (1) NJ定数の従来の計算結果を統一的に含む計算プロスを示し,新たな計算例を与えた。 (2) NJ定数と種々の幾何学的性質,またtype,cotypeとの関係を明らかにした。 (3) 正規構造係数などの幾何学的定数とNJ定数との関係を明らかにした。特に,非線形解析への応用として,NJ定数の条件から不動点定理を導いた。 (4) l_p型でない例を含むC^2上のabsolute normに対してNJ定数を考察し一定の成果を得た。 3. 一様凸性などいくつかの凸性を±1行列のノルムの挙動により統一的に特徴づけた。 4. Ole christensen氏(Technical Univ of Denmark)を招へいし本研究のレヴューを受けるとともに.本研究とframe理論の接点を考察し一定の知見を得た。また,バナッハ空間の位相的構造に関する最近のGowers等による成果と本研究の関連性を考察し一定の知見を得た。 以上の成果を日本数学会年会・秋季総合分科会,実函数論・函数解析学合同シンポジウム,数理解析研究所研究集会,実解析学シンポジウム等で,また国際会議“Function Spaces V"(Poland;ICM98のサテライト会議)及びLulea Univ.(Sweden)で発表した。なお上記の研究成果の一部はL.Maligranda,L.E.Persson(Lulea Univ.)との共同研究によるものである。
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