研究概要 |
本研究の目的は,数理生物学に現れる非線形偏微分方程式系で,走化性による細胞性粘菌の集合体形成を記述する数学モデルである非線形移流拡散方程式系の定性的性質を研究することである.解の時間大域的存在および解の有限時間爆発について研究を行い,次の研究成果を得た. 1.走化性の感度を表す感度関数のおよぼす影響を調べるため,2種類の典型的な感度関数について考察し,空間次元によって解が時間大域的に存在したり,有限時間での爆発が起きたりすることを明らかにした. 2.走化性を記述する非線形移流拡散方程式系を単純化した楕円型一放物型方程式系を考察し,二次元空間における有限時間での爆発解は,孤立爆発点でデルタ関数的特異性を持つこと(走化性の崩壊)を示した. 3.関数の対称化の方法を,上述の楕円型-放物型方程式系に適用することの有効性について調べ,解のL^pノルムを初期関数のL^pノルムによる具体的な評価を与えた.
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