研究概要 |
標準模型の検証ならびにそれを超える模型の手がかりを得るという観点から,本研究では精密実験を念頭に,QCD補正を系統的に検討することを目指した. 1.理論的予言の精度をあげるためには,高次ツイスト演算子の寄与を考慮することは重要である.高次ツイスト演算子に対する輻射補正の理論的定式化ならびに具体的計算を行った.精度の高い実験結果を解析する理論的基盤を与えた. 2.偏極深非弾性散乱過程のブジョルケン変数が小さな領域での構造関数の振る舞いを調べた.摂動の全次数での足し上げの可能性を検討し,数値的考察を行った結果,主要項の足し上げだけでは十分でないことを指摘した.この結果は更なる理論的考察の必要性を指摘した点で重要である. 3.重粒子生成・崩壊に対するQCD補正に関し,トップクォーク生成過程でのスピン相関の厳密な解析を1-loopレベルで行なった.輻射補正の効果が非常に小さいことを示した本研究の成果は,標準模型を超える模型のシグナルを実験結果から得る可能性という観点から極めて重要である.また,異常結合がある場合を,QCD補正も考慮して考察し,特別なスピン基底を取ることで,異常結合が観察できる可能性を指摘した.本成果は現実的観点から重要である.結果は現在,論文として執筆中である. 4.重いクォークを含んだハドロンに対する非相対論的有効理論を用いたアプローチは解析的,数値的に非常に興味ある研究課題である.解析的アプローチにおける問題点,その解決方法を理論的,現象論的両側面から包括的に検討するとともに,その有効理論に基づいた格子ゲージ理論での数値解析を行い,重いメゾンであるB中間子の混合パラメータ,崩壊を考察した.CPの破れに関連し,理論的予言の精度を上げた点重要な成果である.
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