研究概要 |
この研究では、崩壊線近傍の原子核の陽子と中性子の一体場の非対称性が巨大共鳴やβ崩壊にどのような影響を持つかを研究した。特に、中性子崩壊線近傍の原子核の平均場の特徴,小さな分離エネルギーの効果が,しきい値付近の励起状態にどのような変化を与えるか,またアイソスピン対称性の破れにも注目してきた。理論的枠組としては,ハートレーフォック理論や連続状態を取り入れた乱雑位相近似(RPA)理論の微視的理論を用いた。 近年の不安定原子核の研究の特徴の一つに、実験と理論の研究者との密接な協力があり、その中から,かさ原子核の半径の異常な広がりと小さな分離エネルギーの関係、柔らかい励起状態としきい値付近の連続状態の波動関数の関係等が明らかにされてきた。ごく最近も、HeアイソトープやA=20のアイソバーで中性子や陽子の厚いスキンの存在が確認されている。このように崩壊線近傍の原子核では平均場の殼構造の崩れや,中性数と陽子数の非対称性からの中性子と陽子密度分布の大きな違いが発生する。また、その結果として励起状態には連続状態の寄与が重要になる。崩壊線近傍の非対称原子核での連続状態をも含めた集団運動に対する微視的理論は、有効相互作用等の理論的問題や、陽子中性子の自由度をexplicitに取り入れた計算機プログラムの開発等さまざまの新しい問題を含んでいる。また、原子核の基本的対称性であるアイソスピンの大きな破れ,中性子星を含む非対称核物質の状態方程式とも密接な関係を持っており、この研究は原子核構造の研究の新しい分野を切り開いただけでなく,境界領域の物理学との関連にも言及した。
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