研究概要 |
最近の中性子回折実験により、c軸方向に大きな磁気異方性を持つ常磁性の重い電子系CeRu_2Si_2のRuサイトをRhで置換したCe(RU_<1-x>Rh_x)_2Si_2は、0.05≦x≦0.3で不整合なサイン構造(波数、モーメントの方向ともc軸方向)をもつ反強磁性秩序が発生することが明らかにされた。 そこで、本研究において、まず、この系の電気抵抗、比熱、磁化率の測定が行われた。その結果、ネール温度において重い電子のフェルミ面上にc軸に沿ってネスティングが発生し、フェルミ面の一部にギャップが開くことが示唆された,従って、この系の反強磁性はフェルミ面のネスティングに伴うSDW(スピン密度波)であると結論づけられた。また、同じ試料に外部磁場を印加して電気抵抗、比熱、磁化率の測定が行われた。その結果、c軸方向の磁場3.5T以上ではギャップが崩壊して重い電子のフェルミ面が完全に復活し、常磁性のフェルミ液体状態となることが判明した。 次に、SDW相と常磁性相との低濃度臨界領域であるx=0.03、および高濃度臨界領域である0.35,0.375,0.4の単結晶試料において、電気抵抗、帯磁率の測定が行われた。その結果、x=0.03においては低温でフェルミ液体的な温度依存性:帯磁率一定、電気抵抗∝T^2が観測された。一方、x=0.35,0.375,0.4においては非フェルミ液体的な温度依存性:帯磁率∝-√T、電気抵抗∝Tが、それぞれ、観測された。従って、この系のRh高濃度側x≧0.35において、非フェルミ液体相が存在することが示唆された。
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