研究概要 |
研究の対象にしている物質Nb_3Te_4は異方性の大きな超伝導体である.この物質にInとHgを挿入して超伝導,電荷密度波に及ぼす元素添加効果およびNb_3X_4(X=S,Se,Te)の超伝導転移に及ぼす圧力効果について研究を行ったものである.Nb_3X_4の結晶構造は元素を挿入しても格子定数はほとんど変わらないと云う特徴をもっている.したがって,母結晶のバンド構造を維持した状態で伝導電子数を増大することができる.このような特徴をもつA_xNb_3Te_4(A=In,Hg)について電気伝導・熱電能の測定を行なった.得られた成果の主なものを次の通りである. Hg_xNb_3Te_4:Hgは伝導電子の散乱核として機能していないこと,Nb_3Te_4の伝導帯は電子と正孔から成る複合伝導帯でありHgの添加量を増すにしたがって伝導に占める正孔の割合が大きくなることを明らかにした.また,超伝導転移温度はHg添加によって著しく増大することを見出した. In_xNb_3Te_4は41Kと110Kに抵抗異常を示すことは知られているが,新たな抵抗異常が76Kに現れることを初めて見出した.また,Inの濃度がx>0.3では約160Kに抵抗異常が現れること,その立ち上がり温度はInの濃度に依存しないことを見出した.熱電能も抵抗が異常を示す温度域で異常を示す.また,熱電能の大きさはIn添加によって大きく変わり,約x>0.2ではその符号は正になることを見出した.このことからも,Nb_3Te_4の伝導帯は電子と正孔から成る複合伝導帯であることは明らかである. Nb_3X_4の圧力効果:Nb_3Se_4の超伝導転移温度Tcを加えると減少すること,逆にNb_3Te_4のTcは大きくなることを見出した.このような圧力効果を明らかにするためにTcに関するMcMillanの式を用いて考察した.
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