研究概要 |
当該課題で扱った研究は1.粒状体が外部からの振動によってさまざまな流動パターンを形成するものと,2.粒状体が流れとの相互作用により移動や界面変形をするものの2つに大別される. 1.については,粒状体を満たした容器を鉛直に加振したときの対流や構成粒子の混合について実験と数値シミュレーションの両面から検証し,連続体の"引き伸ばしと折り畳み"と同じ機構が存在することを明かにした.また,層の厚みを減少させていくと,表面にさざ波類似の波が発生し,粒子10層程度の薄層では急激に切り立った定在波が観測された.高速度カメラによる観測から,これは外部振動周期の2倍あるいは4倍の周期で振動すること,および波長と加振振動数,加振振幅,層厚,粒径,などへの依存性が明かになった.また,十分広い薄層では,その平面形が加振の増加に伴い正方形,縞状,正三角形/正六角形,など規則正しいセルへ次々と遷移すること,さらに高い加振では準結晶パターンが見られることなどを初めて明かにした. 2.については,粒状体中に空洞領域があった場合にそれが与える流れ場の計算を行ない,また実験との比較検討を行なった.とくに,2次元の円柱状空洞があると,その中心での流速は無限遠流速の3倍に,また,その領域に流れ込む流量は2倍になる(3次元の球状空洞では,それぞれ6倍,3倍になる)ことが示された.このように空洞近傍での流速増加は空洞を構成する粒子間の応力平衡を破り,空洞界面の変形や移動を引き起こす.もし,複数の空洞が流れに沿った方向に並んでいると下流側の空洞が崩壊して上流側の空洞と合併し,急速に流動化して水路網が成長することも実験的に確認された.これは,雨水が地下に浸透していくときに地盤に亀裂を発生させ,土砂崩れを引き起こす素過程と考えられ,災害の予測などへの応用が期待される.
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