研究課題/領域番号 |
09640460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物性一般(含基礎論)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 隆介 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60221751)
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研究分担者 |
山田 耕作 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90013515)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1998年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1997年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | 銅酸化物高温超伝導 / 擬ギャップ / 反強磁性揺らぎ / 有機超伝導体 / 渦糸グラス転移 / 凝ギャップ / 電子相関 / 超伝導 / 強結合 / d-pモデル / モット転移 / 超伝導ゆらぎ / 乱れ |
研究概要 |
平成10年度の主要な研究成果は2つに大別される。前年に引き続き相関の強い電子系のモット転移近傍の超伝導転移の問題,特に擬ギャップ領域の理論構築に焦点を当てた。まず前年に予備的調査を行ったd-pモデルの強結合理論による超伝導転移温度の計算を仕上げた。主要な結果は、フィリングの減少に伴い増大する平均場近似での転移温度からの真の転移温度のずれは、超伝導揺らぎの増強を反映してフィリングの減少とともに顕著になり、その度合は定量的に納得できる値である。しかし、1/2フィリングに接近するとともに真の転移温度がゼロになる傾向は、電子間斥力をまともにとりいれていないため得られなかった。この点を克服することは、以下に述べる反強磁性揺らぎに立脚した理論との間のみぞを埋めることに他ならないが、そのようなより進んだHTCの理論構築には今回まだ至らなかった。また,類似の取り扱いは有機超伝導体を想定した計算にも適用された。さて、今述べた取り扱いは擬ギャップ領域を直接対象にするものだが、本来このHTC物質の正常状態の異常な振舞いの起源はフィリングの減少とともに増強する反強磁性揺らぎにあるという、ほぼ一致した見解が研究者間にある。将来擬ギャップ領域も含んだ理論を完成させるためにも、反強磁性揺らぎに関する特定の近似内で様々の輸送係数がどこまで統一的に理解できるかをはっきりさせる必要がある。今回、主に面内抵抗R_<zz>、ホール抵抗R_<xy>、面間抵抗R_<zz>をフェルミ液体論における反強磁性揺らぎに関してlループの近似内で統一的に理解できることがわかった。実験的には丸っきり関連なしに振舞っているように見えるこれらの物理量を同時に説明できる根拠は、発達した反強磁性相関長により重要になる準粒子の緩和時間の波数依存性にある、ということが主要な結論である。 上記の微視的理論研究の対象はHTC物質や有機超伝導体である。これらの物質は、その擬2次元的(層状)結晶構造により熱的超伝導揺らぎの効果が強められ、この強い揺らぎの効果により(結晶欠陥などによる)乱れの効果がもたらす物理現象がどの状況で重要になるか等、超伝導体の真の相図が問題になる機会を供給している点で共通している。特に最近興味を集めているのが磁場下(渦糸状態)での相図の問題である。今回この渦糸状態の相図の問題の中で、層に平行な磁場下での相図の理論的考察と層に垂直方向に相関をもった乱れ(柱状欠陥)を含んだ系の渦糸グラス転移の理論構築を行った。前者の問題の主要結果は、この題材に関する過去の理論で仮定されていた基底状態の結果を修正したこと、渦糸固体・液体転移が一次転移であることを理論的に予言できたこと、等が挙げられる。後者の仕事では主に、このグラス転移に伴い起こると(直観的に)予期される横マイスナー効果やゼロ抵抗の臨界現象を、ネルソンらによるスケーリング仮説を越えた微視的計算により導出できることを示した。
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