研究概要 |
1.非対称転送行列に対して,繰り込んだ恒等演算子を導入し対称密度行列のみを用いた数値繰り込みアルゴリズムを構成した.密度行列固有値と留保基底数間の普遍的な漸近関係を発見した.波動関数に対する積テンソル型構造仮設に基づく研究を行い,繰り込まれた局所テンソルの具体的構成法を発見し,DMRG型の新しい3次元古典数値繰り込み法を確立した.2次元量子系に対しても古典系の非等方極限として扱えることを示した. 2.NaCI型結晶表面での「逆ラフニング」現象に関して,ステップ張力の異常な温度依存性を確認した.異方的ステップ張力・結晶ファセット形の高信頼計算を行い,表面ステップの「繰り込まれた自由ランダムウォーク描像」の妥当性を確認した.吸着子のある結晶微斜面の問題を取り扱い.吸着子の密度ゆらぎによる短距離ステップ間引力の生成と,それによる吸着子誘起1次相転移を発見した. 3.量子スピン鎖の磁化過程の精密計算を行い,臨界磁場近傍でのデルタ関数ボーズ気体描像の妥当性を示した.S=1/2梯子系やS=1双1次-2次鎖でカプス型の磁化曲線異常を発見した.蜂の巣格子上のVBS型反強磁性量子スピン模型の相関長と副格子磁化の計算を行った.同格子上で積テンソル型波動関数を用いた変分法をPWFRGで実行し,双1次-双2次型反強磁性体において,ネール-無秩序状態相転移が1次であることを示した.2次元イジング型スピン模型において横磁場帯磁率の温度微分が比熱と同じ臨界異常性をもつことを示した. 4.PWFRG/DMRGによる無限系の自由エネルギー・エントロピーの計算法を確立し,フラストレーションのある反強磁性体系のゼロ点エントロピーの計算を行った.線状欠陥のあるイジング型模型に関して,臨界指数の非普遍的振る舞いが4体相互作用のある場合でも成立すること,および,欠陥磁化等の臨界指数の間のスケーリング関係式を確認した.
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