研究概要 |
(1)共鳴が高い衝突エネルギーで観測されるには、標的原子の分極率が大きいことと入射イオンの電荷が大きいことが必要である。ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素の多価イオンと標的(水素原子、水素分子、ヘリウム原子)系で電子捕獲断面積を求めた。(Be^<3+>+He)系、(N^<5+>+H)系において、それぞれ、0.01eV/amu,0.015eV/amuで共鳴が現れた。 (2)励起状態では分極率が大きいので、共鳴が高い衝突エネルギーで観測される可能性がある。(Be^<q+>、B^<q+>イオン+励起H原子)系および(C^<6+>+励起He原子)系に対して断面積計算を行ったところ、ポテンシャル曲線の反発、擬交差点での遷移確率など他の要素が影響を与え、励起状態にある標的は有利でないことがわかった。 (3)アルカリ金属原子は分極率が大きい。(Be^<q+>(q=2-3),B^<q+>(q=2-3)イオン+アルカリ金属)系に対し、断面積を計算した。(Be^<2+>+Li)衝突系で、最大0.06eVの衝突エネルギーで共鳴が現れることがわかり、アルカリ金属原子は標的として有望であることがわかった。そこで(ヘリウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素の多価イオン+アルカリ金属原子)系に対して断面積を計算した。(He^<2+>+Na)衝突系で、最も高い衝突エネルギー0.3eVにおいて共鳴が現れた。 (4)共鳴現象解明のため、波束法に基づくいくつかのコードの開発を行い、(N^<5+>+H)衝突系に適用した。新たに開発した時間依存の量子論的多チャンネル緊密結合法に基づき断面積の計算を行った。また、波束が準分子の回転・振動状態につかまり、有効ポテンシャルの井戸中に長いこと存在し続けるなどの現象を見れるようになり、共鳴現象に対する理解が深まった。
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