研究概要 |
本研究では波動伝搬の幾何学およびそれに関連する現象として,量子Zeno効果について研究を行なった.一次元の波動にはさまざまな幾何学的要素が含まれている.これは,解の空間発展が(2+1)-次元ローレンツ群[SL(2.R)]による運動に帰着されることによる.一方,量子Zeno効果は,頻繁な観測により量子系の自由な運動が抑制されたり,あるいは停止する現象である.この効果には状態間のコヒーレンスの消去あるいは破壊が本質的な役割を果たしている.この非ユニタリ過程はSL(2,R)によってよく記述される. [波動伝搬におけるZeno効果] 異方性媒質(旋光性,2色性)中の波動伝搬において見られるZeno効果について調べた. [古典系におけるZeno効果] 電気回路のような古典的な系におけるZeno効果について研究した.抵抗による損失が量子系におけるdecohereceとよい対応が見られることが判明した。 [Zeno効果のスピン制御への応用] 量子Zeno効果の興味深い点は,「不在の測定」(negative measurement)によっても実現できることである.我々は,これを円偏光による原子スピンの制御に適用し,「光吸収のない光ポンピング」を実験的に確認した. 2状態系における通常のZeno効果は,群との関連でいえば,SU(2)に関するものであるが,これを,SL(2,R)に拡張することが可能である.波動の変調やパラメトリック増幅におけるZeno効果は今後の興味深い研究課題になるものと思われる.
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