研究課題/領域番号 |
09640483
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
物理学一般
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (60107159)
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研究分担者 |
橋本 雅人 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (00273540)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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研究課題ステータス |
完了 (1998年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1998年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1997年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | ナイロン6Y結晶 / フッ化ビニリデン-三フッ化エチレン共重合体結晶 / 二次相転移 / 二次元系の臨界現象 / 秩序-無秩序相転移 / 分子論的機構 / パーコレーション相転移 / 偶数ナイロンの強誘電性 / 高分子結晶 / ナイロン / フッ素共重合体 / 臨界現象 / イジングモデル / 秩序-無秩序型相転移 / パーコレーション理論 |
研究概要 |
高分子結晶の二次相転移の報告例はこれまで無かった。最近、私たちはナイロン66とフッ素系共重合体結晶に二次相転移的現象を見出し本研究を計画した。本研究の成果を以下に記す。 1. 0.5重量%溶液から析出させたナイロン66結晶がほぼ大気圧下で二次相転移を示すこと、約1MPa,465Kに臨界点が存在することを世界で初めて明らかにした。 2. ナイロン66結晶の分子内・分子間相互作用の厳密な計算結果から、矩形格子イジングモデルとのアナロジーを有する理論解析が可能となり、相転移と連続変化の様相を持ち得る、秩序-無秩序型の構造変化であることを明らかにした。結晶相転移の分子論的機構に関して、このように実験との整合性を有する厳密な(近似理論でない)解析理論の提出は高分子の分野では初めてである。 3. 一連のナイロン6Y結晶の構造変化に関する研究からも上記理論の正当性が示された。 4. バルク試料のナイロン62結晶が大気圧下で一次相転移を示すことを発見した。 5. フッ素系共重合体(フッ化ビニリデン-三フッ化エチレン:VDF-TrFE)結晶においても、200〜300MPa,373〜403Kの領域で二次相転移の発現が示された。即ち、高分子結晶中における二次相転移の発現が特殊な高分子における特殊な現象ではないことを明らかにした。 6. 共重合比の変化により共重合体結晶の連続的な構造変化が、ある分率で突然一次相転移になるという現象は、二次元結晶系におけるパーコレーティブな相変化であることが示された。このような概念は高分子結晶の相転移に関して初めて導入されたものである。 7. 電界下の結晶相転移の研究から、偶数ナイロン結晶の強誘電生が初めて示された。即ち、結晶相転移の基礎研究が、応用研究にも幅広く展開する可能性が示された。 以上の結果は、単独重合体、共重合体ともに、高分子結晶としては世界で始めての、二次相転移と臨界点の厳密な証明・発見であるとともに、理論的取扱いが現実の高分子結晶の相転移を実験結果との整合性を保ちつつ分子論的に簡明に記述できた最初の例であり、高分子結晶学の分野に新しいカテゴリーを創始した研究であると自負している。本研究が、現実に存在する二次元系の臨界現象として今後、相転移の理論分野に大きな刺激を与え、高分子物理学の分野に新たな展開をもたらすことを期待するものである。
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