研究概要 |
内陸地震は島弧地殻の顕著な弱面である活断層を地震断層として発生している.活断層がどのような状態にあるか知ることは地震発生に関する重要な研究課題である.また,活断層の活動度評価という面から内陸地震に対する中・長期的見地からの発生予測につながり,地震防災の上で極めて重要な問題である. 活断層がどのような状態にあるか知る上でもっとも重要な情報は応力である.例えば,活断層において将来地震を発生させうる領域とは両盤のカップリングが強い領域であり,プレート運動等を起源とする地殻内歪を顕著に蓄積しているものと思われる.そのようなカップリングが強い領域が活断層の一部分にあれば,そこと周辺のカップリングが弱い領域とを比較すると,応力の主軸の向き等に違いがあらわれる.すなわち,応力場についての情報が得られれば,活断層の活動度についての知見がえられるものと期待される. 本研究ではこのような視点から,従来よりも高精度かつ高密度に応力場の情報を抽出するために,微小地震の振幅や波形をもちいたメカニズム解決定法を開発した.さらに1996年8月11日に発生した鬼首地震(M5.9)の余震,1998年8月3日福島県西郷村に発生した地震(M4.9)の余震等に適用し,東北地方内陸部での地震発生場の応力場についての研究を行った. 得られた余震のメカニズム解の多くは本震と調和的なものであり,広域応力場を反映したものであると考えられる.一方,本震のメカニズム解や広域応力場と一致しない解も得られた.そのような解を持つ地震は本震の断層面の端に位置している.このことは本震のすべりに伴う周辺での応力場の擾乱を反映していると推定される.今後は引き続きデータの蓄積を続けるとともに,数値計算により応力場の情報から断層でのカップリング過程を推定する手法の開発を行いたい。
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