研究概要 |
桜島において,詳細な重力異常分布を明らかにし,過去最大級の火山活動をひき起こした火口位置の推定することを目的として,高密度な重力測定と詳細な地質調査を実施した. 地質調査では,薩摩テフラの全体像について詳しく記載をおこない,噴火の推移,特性について検討した.薩摩テフラは南九州のほぼ全域に分布するが,桜島の南西方向と東南東方向に2つの分布軸を持っている.薩摩テフラは薩摩半島側では9のテフラメンバー(S1〜9),大隅半島側でも9のメンバー(O1〜9)に識別することができる.そのうち,S1〜S3とO1〜O3は同一のものと判定された.噴火の推移としてはまずSl〜S9が噴出し,桜島の南西方向に降下,堆積した.その後にO4〜O9が噴出し,東南東方向の地域に分布したものと考えられる.また,薩摩テフラの主火口はベースサージ堆積物の分布とベースサージ堆積物中に含まれていた炭化木片から,桜島の西側山麓で,袴腰よりも山側にあったものと推定される. 重力調査は,桜島島内の標高300m以下の地域において,346ケ所で実施し,詳細な重力異常分布を明らかにした.得られた重力異常分布は,一般的傾向として,南部から北部に向かって正の重力異常(+12mgal)から負の重力異常(-18mgal)に変化している.注目すべきは,西部域の正の重力異常の領域(大正溶岩)内において,負の重力異常(-4mgal)を示す局地的な領域があることである.この局地的負の重力異常域は,簡単な数値計算から,地下の比較的浅い場所に低密度の物質の存在を仮定することによって説明でき,地質調査によって指摘されている薩摩テフラの主火口の位置とほぼ対応している.
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