研究概要 |
北海道の前期中新世火山岩は,東部北海道には分布せず北部〜中央北海道西縁部に認められる.その広がりは南は苫小牧沖合いから浜益,礼文島を通り南サハリンにまで達する南北配列を示す.これらは玄武岩と流紋岩のバイモーダルな火山活動で特徴づけられ,ユーラシアプレートにオホーツクプレートが衝突しその後の右横ずれ断層によってオホーツク海が拡大し,その断層系に沿う活動であったと考えられる. 中央北海道西縁に位置する浜益地域火山岩は,前期中新世から後期中新世前期(19〜8Ma)はエンリッチな組成を示し,その後鮮新世(〜2Ma)は枯渇した組成へと変化した.前期中新世は日本海盆やシホテ・アリン〜南サハリンにおいて,日本海の海洋性地殻を形成したアセノスフェアの上昇が確認されているので,中央北海道西縁で生じたこの火山活動は,背弧海盆の拡大をもたらしたアセノスフェアの上昇によって,中央北海道周辺の大陸下リソスフェアが加熱されることによって生じたと考えられる.浜益地域周辺では,このリソスフェア由来の火山活動が後期中新世まで継続していた.一方,約6Maに生じた化学組成の急変は,アセノスフェアが浜益地域周辺でマントルプリュームとして上昇して起こった.リソスフェア由来からアセノスフェア由来の火山活動への転換は,ユーラシアプレートとオホーツクプレートの衝突に引き続き生じた太平洋プレートの斜め沈み込み(千島弧の西進)に起因した引張場の形成が関与しているのであろう.
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