研究概要 |
東北日本弧および伊豆小笠原弧を含む南部フォッサマグナ地域の中期中新世〜第四紀火山岩中の超苦鉄質〜苦鉄質深成岩を広域的に採取し,それらの岩石学的性質,同位体化学組成および形成年代について検討した.その結果,東北日本弧のほとんどの包有物はモホ面付近のマグマ溜まりで島弧ソレアイトマグマから形成された集積岩であるが,一の目潟マール放出物と小木の中新世玄武岩中に海洋性の特徴を示す包有物を見い出した.これらは他にくらべて角閃石に乏しい特徴をもつ.また一の目潟マールのクリノパイロキシナイトと温海のかんらん石ガブロはアルカリ玄武岩質マグマを親マグマとする.伊豆小笠原弧の富士火山と八ヶ岳火山ではデイサイト質親マグマからの集積岩であるガブロノーライトを見い出し,さらにこれらは玄武岩質マグマとのマグマ混合作用を受けていること明らかにした.同位体化学組成からは,南部フォッサマグナの佐野川地域(鮮新世)の包有物は非常に低いSr同位体比(0.7031-33)で特徴づけられ,古伊豆七島弧の背弧海盆のマグマテイズムで形成されたものと考えられること,八ヶ岳火山の包有物には伊豆小笠原弧の特徴(<0.7040)だけでなく東北日本弧フロント側の特徴(>0.7040)をもつものがあること,温海(中期中新世)の包有物のSr同位体比は東北日本弧日本海側地域に特徴的な低めの値(0.7032-33)を示すが,かんらん石ガブロには高い値のものがある(0.7038-39)ことなどがわかった.形成年代についてはRb-Sr法で測定したものは有効な年代値が得られず,温海地域のものについてのみ,Sm-Nd法でかんらん石ガブロが28〜32Ma,ガブロが54〜66Maの年代が決定できた.
|