研究概要 |
本研究では西南日本のジュラ紀-第三紀火成岩類の岩石学的・地球化学的研究を行うことによって西南日本の下部地殻や上部マントルの性格が地球化学的・同位体的にどのように変化してきたかを明らかにすることを目的とした.白亜紀の火成岩類のうち,地殻起源と考えられる酸性岩類については多くのデータが提供されているので,ジュラ紀-新第三紀の塩基性岩類に特に重点を置いて検討を行った.その結果ジュラ紀から新第三紀にかけ,程度の違いはあるものの山陽側・山陰側共にenrichしたマントルがdepleteしたものに変化してきたことが明らかになった.この傾向は山陽側で著しくおそらく日本海の形成にともなう西南日本の海洋地殻への衝上に起因しているものと考えられる.山陰側のマントルは第三紀末に再びenrichしたものに急速に変化したことが明らかにされたが,その要因は明確でない.また領家帯花崗岩類のPb同位体の研究から領家帯の下部に先カンブリア代の基盤が存在することが明らかとなり,今後その実態を明らかにする必要が出てきた.また,西南日本の白亜紀火成活動はKula ridgeの沈み込みによると解釈されてきたが,従来岩石学的・地球化学的にはそれを支持する事実は見い出されていない.今回の研究で白亜紀火成活動の早期に活動した火山岩類およびそれに伴う貫入岩類についての検討を行い,現在海嶺の沈み込みの可能性について検討を進めている.その他地殻下部由来の酸性マグマ形成の場や活動様式についての検討も行った.
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