研究概要 |
白亜紀から古第三紀の火成岩類が西南日本においては広く分布し,火山ー深成複合岩体を構成するが,本研究においては,これらの地質,岩石学,地球化学および年代学について検討した. その結果,岡山地域に新見コールドロン,山口県に山口コールドロンが見いだされ,これらはいずれも火山ー深成複合岩体をなす.山口県阿武地域に分布する白亜紀阿武層群の流紋岩とそれを貫く花崗岩類の成因的関係について検討した.両者には全岩化学組成(Baを除く)について顕著な差異は認められない.流紋岩および花崗岩類はそれぞれ,86.8±2.8Ma(SrI値0.70544±0.00024),85.0±3.1Ma(0.70526±0.00023)のRb-Sr全岩年代とSr同位体初生値を示す.それらの全試料からは,87.0±3.1Ma(0.70526±0.00025)のアイソクロンが求められた.両者の産状,全岩組成,Sr,Nd同位体比のデータから,阿武地域の流紋岩と花崗岩類は,共通のSr,Nd同位体比をもつ起源物質に由来し,同じマグマ溜まりから一連の火山ー深成作用によって形成されたものと考えられる. 山口県北東部の須佐地域に分布する山島火山岩の産状とK-Ar年代について検討し,山島火山岩と高山斑れい岩とが火山ー深成複合岩体をなすことについて考察した.山島火山岩は,マッシブ溶岩,ハイアロクラスタイト,シュードピローおよびそれらのフィーダー岩脈などからなる海底火山活動の産物である.山島火山岩と高山斑れい岩のK-Ar年代測定の結果から,これらの形成は中期中新世と推定される.山島火山岩と高山斑れい岩は,時間的にも空間的にも密接に伴って産出し,共通のマグマに由来する火山-深成複合岩体を形成するものと考えられる。これは中期中新世における日本海の拡大に関連した火成活動の産物である可能性がある。
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